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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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アニメで勉強しました

5月31日(火)
 Tさんは5月になってから入学した学生です。国で日本語を少し勉強していたので一番下のクラスにはなりませんでしたが、今のクラスの中では成績が下のほうです。中間テストの文法も悪かったし、授業の内容も難しいと思うようになったので、国で勉強したことも含めて授業前に復習したいと言ってきました。今日は、主に助詞の復習をしました。だいたいわかっているのですが、ところどころ間違って覚えている文法もありました。
 Tさんは国で日本のアニメをたくさん見てきました。アニメを通して日本語を勉強したといっています。ですから、学校で教科書を使って勉強したのと違って、知っている文法や単語に偏りがあります。とても難しいことを知っているかと思えば、本当に基礎的なところで間違えることもあります。Tさん自身、それに気づいて、これではいけないと思い、授業以外の勉強を始めたのです。
 最近、このTさんのようにアニメで日本語を勉強したという新入生が多くなってきました。Tさんのように自分の弱点に気づいて積極的にそれを補う勉強をしようとする学生はいいのですが、自分は日本語ができるという妙な自信を持っている学生には、手を焼くこともあります。テストや宿題のように結果がはっきりわかるものを示して、ここが悪いからこういう勉強が必要だと説明しても、それを認めようとしません。そして、もう一度同じレベルを繰り返すことになって始めてあわてるというパターンを最近よく見かけます。
 アニメで勉強した学生から見ると、KCPの授業のほうが偏って見えるのかもしれません。アニメで日本語を勉強してきたという学生、日本のアニメを勉強しに来たという学生が増えていくのなら、KCPのカリキュラムも変えていかなければならないのかもしれません。むしろ、そういう日本語を積極的に教えていくことが必要なのかもしれません。そういう変化にも対応しながら、でも伝統的な正統な、美しい響きを持った日本語も世界に広めて生きたいと思っています。

  • 2011年05月31日(火)18時09分

福島は、今

5月30日(月)
 4月に福島大学に進学したWさんから手紙が来ました。福島といえば、地震後の原発事故で話題になっているところです。原発事故と地震そのものの影響で入学式が遅くなったというところまでは知っていたのですが、大学が始まってからの話はこの手紙が初めてです。
 手紙で言うには、福島の人たちは地震に打ちのめされているだろうけど努めて平穏を保とうとしているそうです。大学生活に地震の影響は特になく、授業もサークル活動も行われているようです。Wさんは以前福島にホームステイしたことがあり、そのときにお世話になった人と待ち合わせをしている時間に手紙を書いたと書いてありました。
 私も福島の生活がどこまで普通どおりなのか正確にはわかりませんが、Wさんの手紙を読む限り、こちらで心配しているほどではないようです。Wさんが通っている福島大学は、原発から山一つ越えた向こう側にあります。原発付近に住んでいた人たちが避難してきているところですから、放射線の影響はほとんどないと言ってもいいでしょう。震災前と同じ生活とまではいきませんが、かなりのレベルにまで回復してきていると思っていいようです。
 福島へ行く直前、WさんはKCPに寄ってくれました。顔では笑っていながらも、心の中は決死の覚悟があるように感じられました。今日の手紙は、そんな悲壮感はなく、Wさんのキャラクターを発揮しながらキャンパスライフをエンジョイしているようです。留学生が少なく、キャンパスのいたるところで自分が話題になっていることに驚いてもいるとか。
 Wさんが元気に暮らしていることは何よりですが、これをもっともっと外に向けて発信し、一人でも多くの“Wさん”に日本へ来てもらいたいと思っています。話題の中心・福島ですら、多少の不便はあるでしょうが、こんなふうに普通に生活しているのですから、東京は節電以外は以前のとおりです。まあ、震災を期に日本人もかわらなければならないのですが…。

  • 2011年05月30日(月)19時11分

カメさんがんばれ

5月27日(金)
 Cさんはこのところよく私のところへ来て、留学試験の問題について質問していきます。今日も昼休みに物理と化学の問題を聞きに来ました。
 Cさんは決して鋭い感じのする学生ではありません。同じ説明を何度も繰り返さなければならないこともあります。しかし、勉強したことは確実にものにしていくタイプです。ですから、“また同じことを聞いてきて”と思っても、それを表情や態度に出してはいけません。Cさんが納得するまで待ってあげることが必要です。安心して質問できる雰囲気を作ろうと心がけています。
 物理や化学は教えている教師が私1人しかいませんから、Cさんに限らず学生にとっては私が最後のとりでです。どんな場合でも何がきても、確実に受け止める覚悟で仕事をしています。Cさん1人に多くの時間を割くことは、考えようによっては非効率的なことです。なかなか理解の進まないCさんを切り捨てれば、ほかのやるべき仕事がスムーズに進むかもしれません。そうすることが時間を有効に使うということなのかもしれません。でも、そこには人間味というものがないように思えます。頼られたらきちんとそれに応える、努力が報われるような環境を整える、数字では表せない価値を探る、私のような年になったらこういうことも考えて行動すべきではないかと思っています。
 Cさんを見ていると、「ウサギとカメ」の寓話のカメを思い浮かべます。現時点では国立大学に入るという夢にはまだまだのところにいます。たとえ6月の留学試験で思い通りの成績が挙げられなくても、11月の留学試験まで歩みを止めなければ、6月で高得点をあげたウサギを見返すことも不可能ではありません。そういう学生に手を貸すことこそ、「義」だと思っています。
 今日、関東地方は梅雨に入ったそうです。ひと月半の雨の季節が終わったら、夏がやってきます。今年は節電に努めねばなりませんから、これからしばらく今までより過ごしにくい日々が続くことでしょう。来年の夏に思いっきり羽が伸ばせるように、ひと踏ん張りもふた踏ん張りもしてもらいたいところです。

  • 2011年05月27日(金)18時40分

W大学説明会

5月25日(水)
 午後から、講堂でW大学の説明会を開きました。このところ毎年多くの学生がW大学を受け、そのうちの何名かが合格しているということで、W大学の方からわざわざ説明に来てくださったのです。20名ほどの学生が集まり、W大学の留学生入試担当者からの話に耳を傾けました。
 説明してくださった担当者は、大学独自の2次試験の重要さを盛んに訴えていました。これは、受験生にとってはEJUに加えて2次の筆記試験の準備までしなければならないので大変なことなのですが、大学にしたら自分たちのカラーにあった学生を選ぶためには必須の事柄なのでしょう。こういう試験を行ってきているから、W大学は数ある日本の大学の中でも確固たる地位を保っていられるのだと思いました。それゆえ、だれもが入りたがる大学、外国人学生に対する知名度が一番高い大学という地位を保っていられるのでしょう。
 現在、W大学には3000人を超える留学生がいるそうですが、それを8000人にするそうです。しかし、大学が留学生に合わせることで留学生を増やすのではなく、独自のカラーは変えずに、そのカラーに憧れる留学生を集めようという意識が見えました。だからこそ、それがゆえに、余計に学生は入りたがるのでしょう。しかし、担当者によると、今年4月入学の留学生の入試倍率は、一番低い学部でも3倍ぐらいで、単なる憧れでは入れそうもありません。
 今日集まった学生のうち、本当にW大学に出願し合格する学生は、倍率から考えても、ほんの一握りでしょう。でも、学生たちの頭の中には、W大学という高い目標が明確に浮かび上がったことは確かだと思います。

  • 2011年05月25日(水)18時42分

帰ってきます

5月24日(火)
 職員室で昼ごはんを食べていると、事務所から書類作成の依頼が2通来ました。MさんとKさんの書類です。2人とも、先学期、私のクラスにいた学生で、3月の地震の後に退学して帰国していました。今度、またKCPに入るために入管時提出する書類の一部です。一度退学した学生が戻ってきてくれるのはうれしい限りです。ことに、MさんもKさんもとてもいい学生でしたから、心の底から大歓迎です。
 Mさんは今学期もKCPで勉強を続けようと思っていたのですが、ご両親の反対が強く、4月の半ばごろ退学して帰国しました。退学の手続きに学校へ来た時、「先生、必ずまた来ますからね」と言っていましたが、それが実現したわけです。Mさんの熱意に押されて、ご両親も許可なさったのかもしれません。
 Kさんも地震の後すぐ帰国しましたが、すぐ日本に戻ってくるつもりでした。ところが、やはりご家族の反対にあい、その上、交通事故にまで見舞われてしまいました。でも、日本で勉強したいという気持ちは強く、一度電話がかかってきたときも、逆境にあるとは思えないような明るく力強い声で、「またKCPで勉強しますから、そのときはよろしくお願いします」と言っていました。
 2人のご両親・ご家族の理解もあったでしょうが、その後両親やご家族を動かしたのは、Mさん・Kさんの日本で勉強したいという動かぬ決心だったと思います。日本が大変な状況であるにもかかわらず、どうしても日本で勉強したいという強い希望を周りの人に表明し、そして納得させるという大変な仕事を成し遂げたのです。その間には意見の衝突もあったでしょうし、投げ出したくなったときもあったでしょう。そういう難関を乗り越えてまた日本への留学を決めたのですから、3月まで以上に固い新年で勉強を続けることでしょう。
 2人は共に大学進学を目指しています。地震から今まで、それぞれがどのようにして日本留学への道を切り開いてきたかということを面接官の前で披露できれば、数か月の勉強のブランクはありますが、志望校への合格も難しいことではないと思います。
 早く2人に会える日が来ないかと、今から楽しみです。

  • 2011年05月24日(火)17時31分

食生活を豊かに

5月23日(月)
 今日は午後から雨が降り出しました。なんとなく薄ら寒く、季節が1か月ぐらい逆戻りしたような感じでした。ニュースによると、九州の南部が梅雨入りしたそうです。今年も雨の季節の足音が迫ってきました。
 私のクラスの学生たちは元気なのですが、風邪を引いて熱を出して休みますという連絡がけっこう入ってきました。昨日は30度近くあったのに今日は18度と、気温の上下が激しいためでしょうか。この時期は体を壊しやすいので、特に注意してもらいたいところです。
 しかし、私のような年寄りが全く学校を休まず、若くて丈夫なはずの学生がばたばたと病気になるのはなぜでしょうか。私は睡眠時間も決して十分だとは言えませんし、食生活も乱れています。お昼が抜きになったり夕食に近い時間帯だったりすることもよくあります。しかし、朝食は必ず取りますし、野菜や果物、ヨーグルトなどの乳製品は普通の人より多く食べています。それが健康を維持している元になっているのではないかと思っています。
 日本は食べ物が高いせいで、学生たちは偏った食事をしがちです。好き嫌いが激しい学生は、それを注意してくれる親御さんがそばにいませんから、なおのことです。そういう食生活が抵抗力を失わせ、そこに夜更かしなどが重なると、てきめんに病気になってしまうという構図が描けます。
 学生の生活指導も私たち教師に課せられた重要な仕事ですが、食生活までは手が回りません。ほかを削ってでも、食生活は豊かなものにしてもらいたいです。留学生活は体が資本で、その体を作るのは毎日の食事に他ならないからです。

  • 2011年05月23日(月)17時32分

学生いじめ

5月20日(金)
 10時20分頃、いつもより少し遅く、毎日聴解練習に来ているSさんがやってきました。職員室に入ると挨拶もそこそこに、「先生、すみません。外国人登録証を取ります」と。外国人登録証を取りに行ったので遅くなりましたと言いたいのだなとわかりましたが、語学教師は物分りが良すぎるのもよくありません。
 「これから区役所へ行くんですか。行ってらっしゃい。今日は大学院の特別講座がありますから、12時半までにまた学校へ来てくださいね」と私が言うと、Sさんは、予想通り、けげんそうな顔をしました。
 「区役所の行き方がわかりませんか。教えましょうか」
 「先生、いいえ、外国人登録証を取ります」
 「だから、外国人登録証を取りに区役所へ行くんですよね」
 こんなやり取りをしていると、埒が明かないと見たのでしょうか、Sさんは財布からもらったばかりの外国人登録証を取り出して私に見せてきました。
 「あーあ、外国人登録証を取ったんですね。“取ります”じゃありませんよ。“取りました”ですよ」
 「先生、すみませんでした。外国人登録証を取りました」
 時にはこうした失敗も経験しないと、ことばは覚えられません。次から“ます”と“ました”をきちんと区別してくれたら、私もくさい芝居をした甲斐があったというものです。
 学生たちの不満の一つに、自分の日本語は学校では通じるのに学校外では通じないというものがあります。これは教師が先回りして学生の言わんとしていることを察して、学生の思ったとおりに動いてしまうところに問題の根があります。学生の未熟な発音と不完全な文法が理解できることは、本当に困っている学生を救う時には必要でしょうが、学生の語学力を伸ばそうとするときには邪魔になるときもあるのです。
 Sさんは素直な性格ですからいじめるのは気が引けるのですが、時には心を鬼にしないといけません。

  • 2011年05月20日(金)18時52分

最上級クラスとは

5月19日(木)
 午前は最上級クラスの中間テスト試験監督をしました。このクラスには新入生が2人います。国で勉強してきたり、ワーキングホリデーの経験があったりしていて、それなりに腕に覚えのある学生のようです。私も噂には聞いていましたが、どんな学生なのかじっくり観察するのは初めてなので、密かに楽しみにしていました。
 最初のテストは作文。Aさんは、原稿用紙のますの上にある、修正用の細い行に母語で文章を書き始めました。ある程度書くと、それを一気に日本語に訳していきました。そういう書き方をする学生は、初めて見ました。でも、この書き方は、母語で考えてそれを翻訳するという書き方で、本当に力のある人の書き方ではないと思います。KCPが学生に常々言っているのは、日本語で考えて日本語で話したり、書いたりしろということです。これができて、初めて上級の力があると認められるのではないでしょうか。そういう点、Aさんはまだまだだなと思いました。大学院進学を目指しているそうですが、より一層の努力が必要です。
 もう一人のSさんは、遅れて入学してきたこともあり、やや苦戦のようでした。昨日、クラスメートにノートを見せてもらって、自分が入学する前に授業でやったことを勉強していたとのことです。でも、一夜漬けではちょっと厳しかったのかもしれません。そうは言っても歯を食いしばって問題に立ち向かっている姿には、頼もしいものを感じました。この点はAさんも同様で、2人ともテストが終わったときには魂が抜けたような顔をしていました。
 こうして見ると、KCPの最上級クラスはなかなかのものだなと思います。この学校でじっくり力を貯えた学生が学ぶクラスなのです。新入生にやすやすと制覇されてしまっては、最上級クラスの威厳が損なわれます。新入生に入ってもらっても全然構わないのですが、新入生の挑戦を跳ね返すような在校生がいてこそ、歯が立たないテストがあってこそ、新入生にとって勉強のし甲斐のある学校なのではないでしょうか。今学期の最上級クラスは、その責任を果たしたと言えるでしょう。

  • 2011年05月19日(木)18時54分

名乗る?

5月17日(火)
 今朝、一番に学校にかかってきた電話。「はい、KCPです」「U先生いますか」「いいえ、まだいらっしゃっていません」「そうですか。私、今日、体の調子が悪いので、学校休みます」…。これで話が通じるでしょうか。U先生に伝言してあげたいのは山々ですが、これでは誰からの電話かわかりません。「あなた、お名前は?」「私はLです」。Lさんは、こちらが何も聞かなかったら名乗らなかったのでしょうか。それでは欠席の連絡にも何にもなりません。
 私たちの教育が悪いからなのでしょうか、電話をかけてきたときに自分の名前を言わない学生が非常に多いです。ほぼ全員といってもいいくらいです。初級ならともかく、上級の学生でも自分からなまえを言う学生はまれです。日本では、電話をかけたらまず名乗るように教育されるのですが、学生たちの国ではそういう教育はなされていないのでしょうか。
 それとも、携帯電話から携帯電話への通話が普通になり、名乗らなくても名前が表示されるのが学生たちにとっての常識なのでしょうか。そういう通話に慣れてしまい、友達にかけるのと同じ調子で、ついつい、名乗らずに済ませてしまおうとするのかもしれません。しかし、残念ながら、学校の電話は全学生の名前と電話番号を覚えてはいません。
 ここまで考えると、日本の若者も同じような電話のかけ方をしているのだろうなと思えてきました。私など、携帯電話でかけたときも几帳面に名乗ってしまうので、かえって変に思われているのかもしれません。
 午後、A大学の大学院に進学したJさんが来ました。第1志望の会社の面接試験を間近に控えているそうです。Jさんは電話をかけるとき、受けるときはどうしているんですかと聞いてみたかったですが、面接のことで頭が一杯だったみたいなので、合格してから聞くことにしました。

  • 2011年05月17日(火)17時43分

5月も半ば

5月16日(月)
 5月は前半に連休があるので、気がつくと半分過ぎてしまっています。私は、5月は1年で一番速く過ぎ去る月だと思います。今年も、ついこの前まで連休で関西方面を飛び歩いていたと思ったら、5月も半分が終わり、19日のの木曜は中間テストです。今週は学生たちの尻を叩きまくらなければなりません。
 Cさんは再試をため込んだり、未提出の宿題があったりで、そういったものを水曜日までに片付けなければなりません。しかし、今日のところはやってきた形跡はなく、心配なことこの上ありません。授業の練習問題で「Cさんの将来の夢は何ですか」と聞かれたら、「国へ帰ることです」なんて答えていました。自信喪失の度はかなり深そうです。
 Sさんも、今日返されたテストが不合格で、水曜までに再試を受けなければならなくなりました。授業には明るく参加しているのですが、肝心なところがきちんと押さえられていないようです。テストの点数を見た瞬間、「ぐえっ」と顔をゆがめ、ちょっぴり肩を落としていました。
 どの学生も上のレベルに進級したいものです。でも、進級するには、どのレベルでも越えなければならない山があります。その山を越していないと、結局、次のレベルで何もわからないということになります。私は、どのレベルを担当しても、学生にそのレベルの山を示してやります。山を山と理解して、それに向かって勉強していく学生はいいのですが、本当の問題児は、山を示してやったにもかかわらずそれが理解できずにのんべんだらりんと過ごしてしまう学生です。
 CさんやSさんはそこまでひどくないですから、これからに期待をしています。5月は足が速いといっても、学期の半分が過ぎただけです。まだまだ巻き返しのチャンスはあります。Cさん、Sさん、そしてそれ以外の学生も、がんばってください。底力を発揮してください。

  • 2011年05月16日(月)17時45分

理科の模擬テスト

5月13日(金)
 留学試験・理科の模擬試験をしました。何人かの学生は去年の11月に受験経験がありますが、大半は受験経験がなく、解答用紙の記入のしかたから説明しました。
 本番と同じ試験時間で解いてもらいましたが、みんな大変苦戦していました。CさんもLさんもHさんも、解答用紙を出しながら時間が足りないと言っていました。解答用紙を見てみると、最後まで答えが書いていなかったり、同じ番号がいくつも連続して塗られていたりして、学生たちの苦悩の跡がうかがわれました。点数的にも、もう少しほしいところでした。
 レベル3~5あたりの学生が主力なので、日本語を読むスピードがまだまだなのでしょう。これから6月の留学試験までの1か月ほどの間、問題文をいかにして速く読むかの訓練をしていくことも考えねばなりません。そうでないと、せっかく貯えた力を発揮することなく留学試験が終わってしまいかねません。来週の受験講座・理科は、この模擬テストの問題解説を予定していますが、純粋な理科の理論の説明だけでなく、日本語学校っぽい解説もしようと思っています。
 さて、明日は授業です。今学期は震災の影響で始業日が予定より遅かったので、その分の授業を行うのです。そして、授業後は留学試験日本語の模試が予定されています。留学試験に向けて、だんだん緊張感が高まってきました。

  • 2011年05月13日(金)16時48分

海外で一生を過ごす

5月12日(木)
 今日面接したLさんの志望校は、H大学を始め超有名校ばかりです。まだ初級なので、6月の留学試験はもちろん、11月の留学試験でもそういった大学が狙える点数が取れるとは思えません。実際のデータを見せたところ、本人もそれがわかり、再来年の進学を目指して基礎固めをすることに納得してくれました。
 Lさんは大学を卒業したら日本で就職し、ずっと日本に住み続けたいと言います。それゆえ、就職に有利な法学部進学を考えています。文系の留学生は、多くが経営学部や経済学部に進学しますから、Lさんの選択は珍しいと言えます。私は海外留学の経験がありませんから、ずっと留学先の国に住み続けるということがどういうことなのか、どんな気持ちを抱いているのかはよくわかりません。決して自分の生まれた国を捨てるわけではないでしょうが、私は小心者ですから、たとえLさんと同じくらいの若さだったとしても、そういう決断ができたかどうか大いに疑問です。帰る場所があるから安心して留学できるのだという気がします。退路を断ってしまったら、目標に向かって前進する力は増すかもしれませんが、同時に浮き草のような不安定な気持ちにもなってしまうような気がしてなりません。
 こんな考えを持つこと自体、年寄りの証拠だと言われかねません。日本という島国の中で生まれ育ったから、その居心地のよさに安住しようという覇気のなさの表れなのかもしれません。最近、よく、定年退職後に海外永住を決意したという人の話を耳にしますが、私にはちょっとまねできませんね。私は日本という国を根っこに持ってこれからもずっと生きていくことでしょう。日本語教師という、海外でも通用する技術を持ってはいますが、実際に海外に踏み出すとなると、躊躇してしまいます。
 Lさんがどういういきさつで日本にずっと住み続けようと考えているのかは、今のLさんの日本語力では難しすぎるので、来年にでもなったらじっくり聞いてみたいです。

  • 2011年05月12日(木)16時50分

あれから2か月

5月11日(水)
 昨日の午後あたりから雨が降ったりやんだりしています。東京だけでなく、本州は全体的にそういうお天気のようです。西日本は明日まで、東日本はあさってまで雨がちの天気だとか。先週がこんな天気だったら、私の連休はボロボロになるところでした。
 今日で震災からちょうど2か月です。被災地は復興が始まったものの、通常の生活には程遠い状態です。東京も震災直後の混乱は収まったものの、原発が止まったため、夏に向かって節電に努めなければならないという、どことなく重たいムードがあります。でも、考えようによっては、夏までの準備期間が与えられているわけだし、資源節約を本気で考えるいい機会になったとも言えるのです。京都議定書に定められた二酸化炭素排出量削減を達成するドライビングフォースにもなります。
 先週いた関西は、電力事情が切迫しておらず、東京ほど節電ムードがありませんでした。でも、関西電力の原発も定期検査で止まったら、すんなり再稼動できるかどうかはわかりません。そうなると、いずれ東京と同じような節電が求められることになるでしょう。つまり、日本全体が節電・省エネに本腰を入れなければならない状況になりつつあるということです。
 電気をふんだんに使ってきた今までの生活に比べれば不便になることは確かですが、みんなで知恵を絞れば、上手な電気の使い方や無駄を省いて本当に必要なところに集中して電気を使う生活が編み出せるはずです。日本人は今までそうやって数々の困難を乗り越えてきました。今回もきっとできるに違いないと信じています。そして、日本が省エネや二酸化炭素削減において世界の先頭に立つのです。人間万事塞翁が馬、ピンチをチャンスに換えることが肝心です。

  • 2011年05月11日(水)19時40分

面接×2

5月10日(火)
 午前中、日本で大学院に進学したいというSさんの面接をしました。Sさんは国で日本語を勉強してきているので文法はある程度わかるのですが、口が上手に回りません。面接でも、大学院への進学の思いが強いことはわかるのですが、具体的な考えがどうもつかめません。国で何を勉強してきたのか、日本で何を勉強しようと思っているのか、それを聞き出そうとしたのですが、最後まではっきりつかめませんでした。
 大学院は単に勉強を教えてもらうところではなくて、自分で計画を立てて自分で調べ研究していくところなのだということも、うまく伝えられませんでした。大学院の入試までにはまだ間があるとはいえ、コミュニケーションを取るのにこんなに苦労しているようだと、先が思いやられます。入試の面接で面接官の質問の意図をつかみ、それに対して自分の意思を表現したり、自分から何かを提案していかなければなりません。あと数ヶ月でそういうことができるまで力を伸ばしていけるでしょうか。ちょっと心配です。
 夕方は、進学コースのUさんとの面接。Uさんは車のエンジンの勉強がしたいというはっきりとした目標を持っています。志望校のレベルが少々高すぎるのが問題ですが、今はそれに向かっていこうというやる気が感じられます。Uさんは連休前に扁桃腺を腫れさせてしまって、40度以上の熱を出し、1週間ほど学校を休んでしまいました。私との面接はそのときに予定されたいたのですが、それができなかったので、今日、自分から面接してくださいとやってきたのです。それくらいの積極性がぜひとも必要です。教師としても、こういう学生は何とか助けてやりたいと思うものです。
このところ、大学や専門学校の方がいらして学校の説明をしていきます。受験シーズンは静かに始まっています…。

  • 2011年05月10日(火)19時42分

連休の印象

5月9日(月)
 ここ数年、連休は関西方面を旅行しています。今年も、例年通り、3日から昨日まで関西のいろいろなところを歩き回ってきました。東京はパッとしない天気が続いたようですが、関西はお天気に恵まれて、日中は半袖でちょうどよく、薄手のジャンパーが荷物になったくらいです。何せ毎日20km以上歩きましたから、汗がどんどん出てくるのです。
 回った中で印象に残ったところをいくつか。まず、比叡山(ひえいざん)の麓にある西教寺(さいきょうじ)。20km以上歩いて最後にたどり着いたお寺でした。明智光秀(あけちみつひで)とその一族のお墓や関連する史料を見たところで、お茶に誘われました。KCPのお茶会に何回か参加したことがありましたから、ちょっと他流試合というつもりできれいな庭の見えるお茶室へ。お茶を立てる人の手さばきは、KCPで行われている茶道の流派と同じように見えました。お茶会の時と同じようにお菓子をいただき、お茶を飲み干しました。毎週教わっているわけではないのですが、「門前の小僧習わぬ経を読む」なのでしょうか、自然に体が動きました。それにも驚きましたが、たった1杯のお茶で、ものすごく元気が出てきました。正座して休んだせいもあるのかもしれませんが、もう20kmぐらい歩けそうな気がしてきました。この話は、東京へ帰ったらお茶のM先生にしてあげようと思いました。
 それから、世界遺産の高野山(こうやさん)へ行く町石道(ちょういしみち)。高野山から麓の九度山町まで、1町(≒109m)ごとに180の石の道標が置かれているのです。九度山にある180番の町石からスタートして、120番ぐらいまで歩きました。昔の人たちは、町石があるたびごとに祈りをささげたそうです。町石には仏教の梵字で何かが書かれていました。思わず手を合わせたくなるような、高さが3mくらいありそうな立派な石碑でした。1000年も前に高野山までの道を切り開き、多くの人が訪れられるように町石を立てたということは、それだけ高野山の引力が強かった、高野山に何かを求めていたのでしょう。その「何か」は今の私にはよくわかりませんが、でも、高野山には不思議な魔力を感じます。それだからこそ、世界遺産に登録されたのだと思います。
 今日からはまた現実に戻って学校です。心が洗われた思いを失わずに、今学期も全力をつくしていきたいです。

  • 2011年05月09日(月)19時47分

さあ、連休!

5月2日(月)
 さて、KCPも明日からようやくゴールデンウィークに入ります。学生によっては、既に一時帰国をしていたり旅行に出ていたりと連休状態に入っていますが、今日は端午の節句がありました。正式には5月5日なのですが、そこは連休の最中なので、前倒しでしています。
 私のクラスの課題は、各国の「こどもの日」を調べて発表するというものでした。みんな、自分の国のこどもの日にあたる日に何をするか調べたり、自分はその日にどんな思い出があるかまとめたりしてきました。いくつかのグループに分かれてグループ内で発表してもらい、グループで一番上手だった人に代表でクラス全員に発表してもらいました。どの学生も生き生きと話していて、普段とは違った顔が見られました。
 そのあと、5月人形が飾ってある講堂へ行って、写真を撮ったり説明を聞いたりしました。初級の学生なりにいろいろな質問が出てくるのですが、学生たちにわかる言葉で説明するとなると、けっこう難しいものがありました。その後が、お楽しみの柏餅です。床に敷いたござを和室に見立てて、そこに靴を脱いで上がって正座します。他人の家に呼ばれた場合を想定しています。ですから、脱いだ靴はきちんと並べ、出された柏餅とお茶は「いただきます」といってから手を付けるよう、事前に指導しました。もちろん、食べ終わったら「ごちそうさま」です。教室でみっちり言い聞かせておいたおかげで、学生たちは礼儀正しく柏餅をいただいていました。
 授業が終わる直前に、休み中の注意事項を放送で流しました。要は休みだからといって羽目をはずすことのないようにということです。私も明日から旅行に出ますが、学生たちにも有意義な連休を過ごしてもらいたいです。宿題をしこたま出しておいて有意義な連休もへったくれもないかもしれませんが…。

  • 2011年05月02日(月)18時10分

締める? 緩める?

4月28日(木)
昼間、お金を下ろそうと思ってATMへ行きましたが、長蛇の列が。授業が始まってしまいそうだったので、あきらめて学校に戻りました。やはり、世間一般には明日からゴールデンウィークなのだなと感じさせられました。今年のKCPは、明日の昭和の日は授業がありますが、その代わりに5月6日、来週の金曜日は祝日ではありませんが、お休みです。本当は5月2日も休みにしたかったのですが、それじゃあちょっと休みすぎですよね。学生は日本語を忘れてしまいます。
世の中、震災で何もかもが自粛ムードで、連休中のJRや航空機には余裕があるそうです。巣篭もりなんていう言葉が今年の流行語になりかけているそうです。そのため、行楽地はどこもかしこも大ピンチで、何とか客を呼び込もうと必死になっている、というニュースも流れています。自粛のしすぎは景気に悪影響を与える、などという経済論ではなく、やはり緩めるときは緩めないと、ストレスがたまって精神的によろしくないんじゃないでしょうか。
受験講座の学生たちは、連休中はひたすら勉強です。連休の期間だけのアルバイトなどそうそうありませんから、学校の授業がない分だけ、暇な時間が増えてしまうそうです。だから、宿題をばんばん出して、がりがり勉強してもらうことにしました。理科と数学は、いつもの倍くらい、宿題を出しています。留学試験までひと月半ほどですから、ここで気合を入れて力を伸ばしてもらわなければなりません。連休明けには模擬テストを企画しています。こちらは締めるときは締めるといったところでしょうか。がんばるときにがんばっておかないと、悔いを残すことになります。

  • 2011年04月28日(木)19時13分

進歩

4月27日(水)
 今日は半袖の学生が目立ちました。昨日に引き続き風が強かったものの、気温は24.4度まで上がりました。1日中校内にいたため、実際に町の中を歩くとどうだったのかはわかりませんが、学生たちの服装を見る限り、春というよりは初夏といったほうがいい日だったようです。
 私は朝型人間なので、朝の通勤ラッシュよりも前に学校へ来てしまいます。そのため、最低気温に近い時間帯の空気しか知りません。学生たちは、学校の近くに住んでいるケースが多いこともあり、家を出る時にはある程度気温も上がっていて、それを反映した服を選んでくるのでしょう。
 このところ毎日、朝10時に私のところへ来て勉強しているSさんも、今日は半袖でした。来日して間もないため、日本語の音に慣れておらず、それを何とかするためにテープを聴いたり口を動かしたりしています。今日のSさんは、昨日に比べれば長足の進歩でした。昨日はすぐには聞き取れなかった文が聞き取れて、その文をそのまま口に出す練習も、私が予想していたよりずっと上手にできました。この調子でいけば、クラスメートの聴解力・発話力に追いつくのも、そう遠くはないでしょう。
 教師や友達が何を言っているのかわからなかったり、自分の言いたいことが口から出てこなかったりというと、授業を受けていてもストレスがたまるだけだと思います。それでは、せかっく持っている文法力が生かせずに終わってしまいかねません。Sさんの場合、大学院進学という大きな目標がありますが、それを実現するためにもここは踏ん張りどころです。耳と口がスムーズに働くようになれば、文法という土台はしっかりしているのですから、コミュニケーションも思い通りに進み、夢に向かって一歩も二歩も踏み出すことができるでしょう。
 Sさんは真面目な学生で、一見つまらなく感じられる練習もこつこつ続けます。割と年上なので、努力が成功につながった経験を持っているのかもしれません。明日もSさんは約束どおり10時に来ることでしょう。明日はどこまで進歩しているのか見るのが楽しみです。

  • 2011年04月27日(水)19時15分

4月26日(火)
 10mを超える南風が吹き、絶好のコンディションとは言えませんでしたが、いくつかのレベルが新宿御苑で花見をしました。ゲームをしたり、レベルによってはおやつを買い込んでみんなと食べたり、学生も先生も、けっこう楽しんでいたようでした。
 5月がすぐ目の前のこの時期、東京は既に花の盛りは過ぎていますが、それはソメイヨシノのこと。新宿御苑では大型連休直前でも10種類以上の桜が美を競っています。2月半ば、寒い盛りがやっとすぎたころから、ゴールデンウィークのころまで、数十種類の桜がかわりばんこに咲いていくのです。私もいろいろな国の学生を新宿御苑に案内しましたが、みんな一様に喜んでくれます。中には写真を撮りまくって、わずか1時間かそこらでメモリーを一杯にしてしまった学生もいました。何がその学生をそんなに引き付けたのかまではわかりませんが、桜の花には日本人のみならず、世界の人々をもとりこにする不思議な力が宿っているのでしょう。
 今年は、東北の桜がとりわけニュースになりました。津波に洗われた町に咲いた一輪の桜、去年までと同じように枝一杯に花をつけた古木、どれも被災地の人々を勇気付ける花だったのでしょう。一年に一度の、わずか数日の花の季節に思いを寄せる、その心根は、先祖代々変わらないものでしょうし、日本人ならだれもが理解する心情だと思います。そういったところに日本の文化を感じ取れたら、留学の価値もひときわ高いものになることでしょう。
 新宿御苑へ花見に行った学生はどうだったでしょうか。「文化」の片鱗でも目にすることはできたでしょうか。

  • 2011年04月26日(火)19時20分

里帰り

4月22日(金)
 昨日、今日は、どういうわけか、3月に卒業した学生がたくさんやってきました。いや、昨日来たLさんは去年の卒業生でしたね。それはともかくとして、みんな元気そうで何よりです。でも、まだ4月です。5月病にかかる前なので、安心はできませんが…。
 Bさんは、もう、すっかり大学になじんだようです。同級生に「北海道出身?」と聞かれ、日本人と間違われたと喜んでいました。Bさんの若干怪しげな発音が、日本人にはどこか未知の土地の方言に聞こえたのかもしれません。確かに、KCPにいたときより、いくらかこなれた言葉遣いをするようになっていました。
 芸術系の大学に進学したGさんは勉強しようと思っていた写真の授業が面白いと言っていました。外国人留学生で去年の留学試験を受けていたのがGさんだけだったので、奨学金がもらえそうだとニコニコ顔でした。芸術系大学の場合、留学試験不要で入学できるところも多いのですが、留学試験を受けていると、こんないいこともあるんですね。いいことを聞きました。「金曜日は午後の授業がないから毎週来ます。じゃあ、また来週」と言いながら帰っていきました。
 Hさんは、髪も服装も派手になって帰ってきました。ちょうど1年前、Hさんが入学した時は、教室の隅っこでおとなしくしていたのに、変われば変わるものだと感心しながらまっ黄色の髪を眺めていました。大学の近くに引越しをし、新しい環境でまた人間関係を作り始め、力強く新入生をしているのでしょう。
 私が席を空けていたときに、Eさんも来たとか。Eさんは、よく顔を出すSさんやYさんと同じように、履修登録を手伝ってもらいに来たみたいです。
 そのSさんとYさんが、今、目の前にいます。教授や友達の愚痴をこぼしています。こんなふうに、卒業生が気軽に遊びに来られる職員室をずっと続けていきたいです。

  • 2011年04月22日(金)19時16分
Web Diary