予定変更

3月5日(木)

明日が江ノ島小旅行なので、私のクラスでは毎週金曜日にある作文が1日前倒しになりました。テーマを発表してそれについて少し話合わせ、大体の構成を示して書いてもらいました。スマホで字や単語を調べて書くのは禁止ですが、教科書を見るのは認めています。授業で勉強した表現や語彙を実際に使ってもらうことも、作文の授業が担う使命の1つですから。

教室内を見て回っていると、時々声がかかります。この言葉はこういう場面で使っていいのかとか、教科書の△ページの表現と◇ページの表現のどちらがこの場合にふさわしいかとか、こういうことを言いたいけど、どう表現したらいいかとか、いろいろ質問が飛んできました。こういう質問に答えるのは、スマホを禁じているのですから、厳密に言えばカンニングなのでしょう。でも、こういう機会を利用して表現や単語を覚えてもらえばいいと思い、聞かれたら素直に答えました。

初級っぽい質問はなく、概して“もうすぐ上級”というこのレベルにふさわしい内容でした。力を付けてきたんだなあと思いました。学期の最初の頃に比べて、いい意味で理屈っぽくなってきたし、複数の単語や文法の比較をよく聞かれましたから、表現の幅が広くなってきたのです。

授業の終わり近くに、「この作文は私が集めますが、採点はいつもの通りS先生です」と言うと、教室全体から安堵の声があがりました。私が採点したテストでボコボコに減点された経験を持つ学生たちがホッとするのは当然でしょう。

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心配性

3月4日(水)

Yさんは昨日のSさんより少し上のレベルの学生です。すでに、行こうと思っていた専門学校に合格しています。しかし、Yさんは、どこかのクラスの学生たちとは違って消化試合などにはならず、毎日真剣に授業を受け、宿題も必ず提出します。会話力に自信がないから、授業中の受け答えなどで変なところがあったらどんどん注意してもらいたいと言います。中間テストの答案用紙を見せると、100点の科目には目もくれず、77点の科目の間違えたところについて、なぜ自分の答えではいけないのかと質問してきました。

専門学校に合格はしたものの、現状の自分の日本語力では専門学校の授業についていけるか自信がないので、KCPにいるうちに可能な限り日本語力を高めたいのだそうです。進学が決まった学生の鑑ですね。誰もがこういう姿勢で卒業まで真剣に勉強してくれれば、日本語がわからないために進学先の授業がわからず、退学を余儀なくされる学生がぐんと減るはずです。

専門学校や大学の側も、“合格=日本語力十分”だとは思っていません。“3月の日本語学校卒業まできちんと勉強を続ければウチの学校の授業について来られるぐらいの日本語力まで伸びるだろう”という見込みで合格にしているに過ぎません。進学先の先生方もそうおっしゃっています。いわば仮免許みたいなものです。にもかかわらず、受かった学生は浮かれて日本語の勉強がおろそかになりがちです。授業料や生活費がもったいないから退学して進学先への入学直前まで帰国するなんて、もってのほかです。国の言葉で生活していたら、日本語力は退歩してしまいます。

Yさんは、むしろ心配性なくらい、少しでも高度な日本語を身に付けなければと思っています。JLPTのN2は持っていますから、7月のJLPTに向けてN1の勉強を始めていると言います。そういう姿勢で日本語に臨んでいる限り、余計な心配は不要でしょう。

爪の垢でもフケでもいただいて、わがまま放題を繰り返している大バカ者どもに飲ませてやりたいです。

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雨の日

3月3日(火)

本来だったら江ノ島小旅行の日ですが、朝から雨でした。延期して大正解でした。

お天気のせいか欠席が多い中、Cさんは朝から教室にいました。しかし、明日が国立大学の受験日なので心ここにあらずの体でした。クラスの学生に課題を与えている時に近寄って「明日が最後か」と聞くと、「緊張しています」と答えました。その後の選択授業の最中も、内職をしていたそうです。学校に出て来ただけでもよしとしなければなりません。せめて今夜はよく寝て、教師のお目こぼしに応えてもらいたいものです。

私の選択授業・漢検に挑戦も、受講している学生の大半が卒業対象者ですから、卒業認定試験の終わった今は、消化試合みたいなものです。先週までの活気が感じられませんでした。気を吐いていたのは、Dさんなどごく数名の漢字大好き学生だけでした。窓の外雨と相まって、教室内の空気は淀んでいました。

午前中の授業のまとめとその後に控えている日本語プラスの授業の準備をしていると、N専門学校から電話がかかってきました。受験したSさんの会話力が低くて、合否判定を保留しているという連絡でした。今度の日曜のオープンキャンパスに来て、改めて担当者との会話テストを受けてほしいとのことでした。

Sさんはレベル3の学生で、ずば抜けて成績がいいというわけではありません。ごく普通のレベル3の日本語力では、専門学校の授業にはついていけないでしょう。Sさんの担任の先生が言うには、レベル5の友人がN専門学校に進学するので、自分もと思ったようです。そんなことで無理して進学したら、Sさん自身のためになりません。合否判定保留ではなく、否が本人のためです。

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人生の分かれ道

3月2日(月)

子:俺、会社に就職はしない。バイトしながら、もう少し頑張って、漫画を描いて絶対プロの漫画家になる。

父:世の中そんなに甘くないぞ。お前ぐらいの実力じゃ、プロになるのは無理だ。

…なんていう親子喧嘩のやり取りを聞いて、グループに分かれて自分の意見を言い合うという活動をしました。

KCPの学生は、数年間働いてためた自己資金を元手にしている人もいますが、多くの場合、留学のスポンサーは親です。親を説得してという学生もいれば、親に命じられてという学生もいます。親子でじっくり話し合って、納得ずくでというパターンが一番多いように思えます。

話し合いの結果を聞いてみると、親の意見が正しいと考える学生が若干優勢でした。教材に取り上げられた例が漫画家で、その道の厳しさは学生もよく知っています。ネットビジネスとかだったら、違った反応を示したかもしれません。

私が大学の志望校を決める時、最初は気象大学校に行きたいと親に言いました。親は、「気象大学校に進学したら、将来は気象庁に入る以外道はない。気象庁に入ったら日本列島のはずれの島の測候所で、1人で1年中観測し続けなければならないかもしれない」と反対しました。要は、つぶしの利く進学先を選んでおけと言いたかったのでしょう。

私はあっさりその言葉に従い、理科系の中では実につぶしのきく学科に進みました。つぶしが利きすぎて、エンジニアからスピンアウトして、こんな仕事をしているという次第です。これが、気象大学校に進むより、私にとって幸せだったかどうかはわかりません。気象大学校コースだったら、今頃、お天気おじさんか何かになっていたかもしれません。まあ、大失敗の道ではなかったと思っています。

学生たちが数十年後、この日本留学を振り返った時、どう思うでしょう。親の意見に従って、あるいは、自分の意見を押し通して、日本留学をしたおかげで充実した人生が送れたと思ってくれるでしょうか。

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日程変更

2月28日(土)

3月3日(火)に予定されていた江ノ島小旅行が、3月6日(金)に延期されました。3日はどの天気予報サイトを見ても天気が悪く、週間天気図では低気圧が3日から4日にかけて本州南岸を通過するという予想になっています。バス旅行なら雨でも決行でしょうが、今回はクラスごとに江ノ島近辺を歩き回ることにしています。雨中行軍は好ましくなく、病弱者が多い学生は風邪をひきかねません。それゆえ、天気が安定していそうな6日(金)に延期したという次第です。

外で行われる学校行事は、“天気よければすべてよし”です。青空が行事の成功要因の9割を占めると言ったらさすがに言い過ぎでしょうが、学生の印象は天気によって全然違います。今回は江ノ島から富士山が見えるなどという写真でムードを盛り上げた手前、雨天決行は好ましくありません。銭洗弁天へ行ってお金を洗って大金持ちになろうなんてことも計画していますから、雨は避けたいです。

3日延期になったのですから、計画を練り直し、もうひとひねりしようかとも考えています。他のクラスがいかない所へ連れて行ってあげようかと地図をためつすがめつ見直しています。江ノ電に乗って有名なところを見て回るだけじゃ能がありません。お金をかけずに思い出に残る小旅行にしたいものです。卒業生にとっては、これが最後の学校行事ですから、印象深い旅行をはなむけとしたいのです。

6日の小旅行が終わったら、5日後が卒業式です。あっという間です。

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響かない

2月27日(金)

卒業認定試験がありました。卒業認定試験とは、各卒業予定者が、KCPが「卒業証書」を授与するに値するレベルにまで達しているかどうかを見る試験です。最後の学期まできちんと勉強した学生が点を取れるような問題を出題します。私なんか、授業で使った補助プリントの問題をそのまま出していますから、きちんと授業に出ていた学生にとっては歯ごたえがないくらいだったのではないかと思っています。

試験監督から戻ってくると、Kさんが叱られていました。すぐにまた出て行かなければならなかったので耳に入ってきた断片的なやり取りしか知りませんが、どうやらKさんは試験時間の最中にスマホを見たため捕まったようです。そして、Kさんは「確かにスマホは見たけれども、スマホで何か調べてテストの答えを書いたわけではないからカンニングではない」と主張しているようでした。

日本では、試験時間中にスマホを手にしただけでカンニングとみなされるのが常識です。JLPTやEJUではスマホの取り締まりが強化されています。私も、試験監督に入った時には、「ケータイ・スマホはスイッチを切って鞄の中へ」と板書し、口頭でも注意します(実際に鞄に入れる学生は少ないですが)。そういう世の中の流れを知らなかったのか、卒業認定試験を甘く見ていたのか、それとも毎度おなじみのスマホ中毒患者なのか、その辺のところはどうなのかよくわかりません。

あくまで自分は悪いことをしていないと言い張るKさんに、説教していたT先生も苦労なさっているようでした。言葉が学生に響かないんですねえ。

午後は日本語プラス生物とレベル1の代講。このレベル1の学生たちがKさんみたいに育っていかないようにと、思わず気合が入ってしまいました。

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自信につながれ

2月26日(木)

Lさんが漢字復習テストで初めて満点の10点を取りました。新入生のLさんは、学期の最初、自分は漢字が全然書けないのでずっと進級できないかもしれないと、授業後に1時間近く相談に乗ってあげた学生です。

確かに、学期が始まった直後の漢字復習テストは、2点とか3点とか、0点を免れるのがやっとという点数でした。苦手意識が先立ってしまい、書くのも読むのも投げているような状態でした。

相談に来た時、“まず、読みで点を稼ぎなさい”とアドバイスしました。そして、読み問題の漢字が書き問題で出ることがあるから、問題文の漢字をそのまま写して点を取れば、合格点(6点)も夢ではないという話をしました。

これがずるい点の取り方のように見えるかもしれませんが、「時間」の“間”は、「コンビニとレストランのあいだ」の“あいだ”にも使うというのは、立派な漢字の知識です。それを元に点を取ったとしても、ズルではなく漢字力でもぎ取った点だと思います。漢字に対する勘を養うことにつながっていくのです。

そうやって合格点の日がだんだん増えていき、そして、ついに、満点を取る日を迎えたというわけです。中間テストは毎日の漢字復習テストより試験範囲がはるかに広いので合格点は取れませんでしたが、箸にも棒にも掛からぬほどではありませんでした。期末テストで挽回可能な範囲の不合格点でした。

記念すべき10点のテストは、明日Lさんに返されます。それを見て自信をつけ、期末テストでは堂々の合格点を取ってほしいです。

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雨中行軍

2月25日(水)

毎年、2月25日は、国立大学の留学生入試の独自試験がいちばん集中する日です。最上級クラスの学生も何名かが受験に行っています。Mさんは受験勉強に集中したいと、先週末ぐらいから学校を休んでいます。この期に及んで何かしてもどうにかなるもんじゃないよと言ってやりたいところですが、そんなことを言っても聞く耳を持たないでしょうし、変に気持ちが揺らいでしまったら逆効果ですから、何も言いませんでした。きちんと私に連絡して来たんですから、ちゃんと周りは見えているのでしょう。

Hさんはすでに国立大学1校、私立大学1校に受かっています。第1志望の大学は記念受験的な面もありますが、それなりに準備もしてきました。誰もが行きたい大学を狙っているのですから、面接試験でも厳しい質問が飛んでくるのでしょう。でも、気楽に勝負できるという面からは、“もしかすると”という期待を抱きたくなります。

Cさんも1校合格を勝ち得ていますからのびのびと受験できるはずですが、今学期に入ってからはかなり気合を入れて受験準備をしてきました。難関校ばかり受験してきましたが、昨シーズンの受験のリベンジでもありますから、簡単に引き下がるわけにはいきません。昨日の帰り際、私に握手を求めてきました。私は天神様でも大黒様でもパワースポットでもありませんが、精一杯力を込めて握り返しました。

結果が出るのは江ノ島小旅行の頃でしょうか、もう少し後でしょうか。正夢になれと祈りつつ、しばらく夢を見させてもらいます。

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採点結果

2月25日(水)

中間テストの採点をしました。私の担当は、中級クラスの「表現」です。文法みたいなものです。

選択式の、記号で答える問題はまあまあ答えられるのですが、自分で考えて、文を作ったり穴埋めをしたりする問題となると、減点減点減点で、あっという間に点がなくなってしまいます。今学期勉強した表現もさることながら、今までに勉強したはずの事柄も間違えちゃうんですねえ。自動詞と他動詞が反対だったり、助詞を間違えたり、形式名詞を入れなきゃいけないのに抜かしたり、濁点や促音を落としたり、“忙しい気味”なんてやっちゃったり(気持ちはよくわかりますが…)、もっともっともっと正確性を追求してもらいたいです。

それから、文をきちんと読んでいないんですねえ。文法表現の“かけら”に反応して文を作ってしまうので、文全体を見渡すと意味が取れなくなっている答えが目立ちました。学生たちの辞書には、「見直す」という単語はないのでしょうか。

学生たちの多くは、自分はそこそこできたと思っていることでしょう。しかし、採点結果を見たら、茫然自失に陥るに違いありません。自分の頭に残っているものがいかにあやふやでいい加減なものか思い知らされて、血の気が引いてしまった学生の顔が手に取るようにわかります。

でも、これは、私たちの教え方、授業の進め方に何かが足りなかったことの証左にほかなりません。こちらも学生の間違え方を十二分に研究して、これからに備えて行かねばなりません。

今週末は、卒業認定試験があります。こちらの試験結果については、“これから”がありません。

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仲良し

2月20日(金)

TさんとGさんは仲良しで、教室ではいつも隣に座ります。ペアワークも2人でやります。いつも同じペアになるのは好ましくない点もありますから、この2人が組まないようにあえてクラス全体をシャッフルし、席の離れた学生と組ませることもあります。

授業中に仲がいいのは構わないのですが、この2人は欠席する時も調子を合わせているようです。本人たちに欠席理由を聞いてもそんなことは言いませんが、よく同じ日に休みますから、そんなことを疑っています。2人とも進学先が決まり、卒業式までの学生ですから、授業から何かを得ようという気持ちも薄れているように見受けられます。“楽しい勉強”に傾き過ぎているきらいがあります。

私たちは、進学してから困らないだけの日本語力をつけてもらおうと思い、授業や教材や教室活動などを考えています。そういうことをはっきり言うこともあります。理解してそういう方向に動いてくれる学生もいますが、左の耳から右の耳へ抜けていく学生もいます。TさんとGさんは、残念ながら、後者の典型です。KCPの教室の中ではそこそこできますが、進学先の教室ではどうでしょう。大きな大きな疑問符をつけざるを得ません。

卒業式までカウントダウンに入ったこの期に及んでは、もはや打つ手はほとんどありません。“合格=その学校の授業が受けられるだけの日本語力が保証された”と思い込んでいます。そう思い込んでしまった学生の信念を変えさせるのは、至難の業なんていうものではありません。2人は今から勉強しても手遅れかもしれませんが、そういうマインドだけは持ってもらいたいです。

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