束になってかかってこられてます

11月14日(金)

昨日の中間テストの採点が、一向にはかどっておりません。火曜日に行った選択授業小論文の採点も、半分ほど残っています。計画では昨日までで小論文の採点は終わっているはずだったんですがねえ。机の上にはテストの束が4つ、小論文の原稿用紙が20枚ほど、デスクトップの中には会話テストの録画が1クラス分、採点を待っています。

私の場合、自分で教材を作らねばならない授業が多く、そちらを優先せざるを得ないため、中間テストの採点を先送りにしているという図式です。それでも、レベル1のクラスの採点は、すぐに手を付けないと各方面にご迷惑をおかけしかねませんから、何とかしたいと思っています。

さらに、来週月曜日にはレベル1の漢字テストがあり、宿題プリントを回収することになっています。レベル1は、勉強(授業)内容は難しくないのですが、細かいところまで目配りをしておかないと、変な癖がついてしまわないとも限りません。

それから、受験シーズンですから、その関係の面接練習や志望理由書のチェックや進路相談などといった仕事が飛び込んできます。こちらへいらっしゃった学校さんのお話もしっかりお聞きして、有益な情報へと昇華させて、KCPの学生が他校の受験生との競り合いに勝てるようにしていきます。

そんなこんなで、やること満載のまま、週末を迎えてしまいました。来週いっぱいぐらいまで、授業やら採点やらの締め切りをかろうじてかわす綱渡りの日々が続きそうです。

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重症患者

11月13日(木)

中間テストの試験監督クラスは、その学期に授業を受け持っていないクラスです。しかし、そのクラスに前の学期までに受け持ったことのある学生がいることはよくあります。というか、必ず何人かいると言ったほうがより正確でしょう。

午前中に入ったクラスは、半分ぐらいが先学期私が受け持った学生でした。9時のチャイムと同時ぐらいに滑り込んできたFさんは、先学期もギリギリセーフかアウトかが多かった学生です。相変わらずだなあと思いました。出席する日は朝早く来るCさんも、そのまんまでした。

「学生証を机の上に、ケータイ・スマホはカバンの中に。テストを提出しても教室の外に出ないでください。教室の中で勉強するのは構いません」など、テストの注意を伝えて、テストを始めました。上級クラスともなれば、“勝負”に出る学生はめったにいません。監督者として教室の中を歩き回りはしますが、カンニングの現行犯逮捕というより、未然防止が主たる目的です。

聴解テストの最中に見回りをしていたら、一番後ろの席のYさんがスマホを見ていました。ちらっと見えた画面からすると、SNSを見ていたようです。聴解問題の音声が流れていますから声を出すわけにいかず、スマホを指さして机の中にしまわせました。他の科目だったらスマホを取り上げるところですが、他の学生への迷惑を考えるとこの辺で妥協せざるを得ませんでした。

Yさんは先学期も授業中はスマホに集中し、依存症ぶりを遺憾なく発揮していました。中間テストの最中でも我慢できずにいじってしまったとなると、病状はさらに悪化したようです。これでは入試でもやりかねません。もちろん、失格・不合格です。その大学に“KCPの受験生は要注意”なんて思われるようになってしまったら、個人レベルの問題ではなくなります。

Yさんはスマホ断ちをしない限り、日本中どころか、世界のどこへ行っても、大学進学など無理です。火曜日のこの稿で取り上げたJさんも重症だと思いましたが、Yさんはそれ以上です。残念ながら、スマホ依存症回復コースは、KCPにはありません。

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先生になりました

11月12日(水)

午前中、午後の授業の準備をしていたら、「先生、お客さんです。10年以上前の卒業生だそうです」と呼び出されました。

受付まで出て行くと、髪に白いものが交じり始めたKさんが軽く頭を下げました。Kさんは指定校推薦でM大学に進学しました。そこで博士を取り、日本で就職しました。ここまでは、だいぶ前に顔を見せてくれた時に語ってくれました。そして、この春に母校のM大学にスカウトされて、教壇にも立っていると言います。名刺の肩書は“講師”となっていますが、准教授になる見通しはついているみたいです。

KCP時代のKさんは、とにかく努力家でした。努力を続けられるという、貴重な資質を有していました。M大学に進学できたのもこの努力の賜物でした。10年近くかけて博士号を手にしたのも、この稀有な才能のなせる業に違いありません。さらに、就職先で実績を上げ、大学院までに学んだことを実践し、このたび母校に戻ったのです。普通の人にはなかなか歩めない道のりです。

Kさんは留学生入試にもかかわっていますが、最近の留学生は自分たちの頃よりレベルが低いと嘆いていました。M大学について研究せずに、単にEJUの点数だけで志望校を決めてくるので、面接しても入りたいという意欲があまり感じられない受験生が目立つとも言っていました。

今のKCPには受験生時代のKさんより日本語ができる学生がおおぜいいます。しかし、目標に向かって突き進む力はだいぶ劣るような気がします。また、KCPにも点数合わせで志望校を決める学生がいます。そんな学生がM大学を受験したら、Kさんに笑われてしまいそうです。「先生、どんな教育をしているんですか」などとねじ込まれたら恥ずかしいです。

Kさんに尻を叩かれた私は、気合を入れてレベル1の教室に入りました。

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リストに追加

11月11日(火)

上級の選択授業の中間テストがありました。あさってが読解や聴解など、クラス授業の科目の中間テストですが、選択授業はそれに先立って行われます。

私の担当科目は小論文。まず、先週の授業で書いた小論文を添削したものを返し、簡単に講評。その後、中間テストの課題を配り、書いてもらいました。スマホを見るのは厳禁ですが、上級各レベルで使っている文法や語彙などの資料ファイルは見てもいいことにしました。授業で勉強した表現を実際に使ってみることも勉強のひとつですから。上級の授業で取り上げる表現は硬いものが多く、小論文で事実を叙述したり自分の意見を主張したりするのにはちょうどいいです。上級まで上がってくる学生は、くだけた表現、初級中級で勉強した文法や語彙はそこそこ使えますが、フォーマルな文章語となると、まだまだなところがあります。それを少しでも何とかするのが、この授業の役割のひとつです。

学生たちはスマホをかばんにしまい、課題に取り組み始めました。課題文を印刷した用紙の空白にメモをしながら構成を練る学生、課題文の難解なところを母語に直して理解しようとする学生、いきなり原稿用紙に書き始める学生、しばらく考え込む学生、実に十人十色でした。

終了15分前ぐらいに、Jさんが手を挙げました。行ってみると、書き終わったので提出してもいいかと聞いてきました。読んでみると、1段落目に2つの間違いがありました。それを指摘し、最後まで読み直すようにと指示しました。しかし、机の下に隠した左手にはスマホがしっかり握られており、推敲に関してはあまり期待しませんでした。

Jさんは、1段落目の間違いは直したようですが、私が他を見回っている間に、案の定、スマホを始めました。読み直しよりもスマホを優先したようです。

テスト終了後、真っ先にJさんの小論文を読みました。予想どおり、1段落目は直されていました。しかし、結論の段落は意味不明でした。志望校不合格間違いなしの出来でした。感情的にはF評価ですが、結論の手前までは内容がどうにか理解できるので、お情けのC評価としました。

そして、Jさんをスマホ依存症者リストに加えました。

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入れませんでしたが…

11月10日(月)

昨晩、テレビをつけると、東北地方で地震が発生し、太平洋沿岸に津波注意報が発表されているという緊急情報が画面の隅っこに出ていました。大船渡、釜石、久慈などで10~20センチの津波が観測されたという観測結果も出てきました。幸いにも、それ以上大きな津波は来襲することなく、海面は沈静化していきました。大勢の方が避難したようですが、被害は出なかったとのことで何よりです。

昨日の津波避難に合わせたわけではありませんが、午前中、避難訓練を行いました。地震が発生し、まず、各教室で机の下に身を隠しました。その後、近隣で地震に伴う火災が発生したため校舎から避難するという想定で、教師・学生が教室から校庭へ下りてきました。今回は人員確認を行っただけでそのまま引き返しました。

私はその人員報告を受けるという立場で、校庭に立っていました。避難してくる様子を見ると、学生たちはわりとまじめにやっていました。スマホを見ながらたらたらと歩いてきたなどという不届き者はいませんでした。頭部を保護するために鞄を頭にのせてきたり、煙を吸わないようにとハンカチで口や鼻を覆ってきたりと、一工夫加えて避難してきたクラスもありました。

午後は、教室内で机の下に入るところまでしました。もっとも、私のクラスのKさんは体が大きすぎて机の下に入れませんでしたが。

日本で暮らすのなら、いつ大地震に遭遇してもおかしくありません。本当に3.11並みの大地震に襲われたら慌てるでしょうが、1度でも体を動かしたことがあるのとないのとでは、その後の行動に大きな違いが出るはずです。それが運命の分かれ目になるかもしれません。机の下に入れなかったKさんも、それ以外の方法で身を守るんだという発想をしてくれれば、訓練を実施した甲斐があるというものです。

でも、そういう日が来ないのが、一番いいんですけどね。

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勉強したいこと

11月8日(土)

来週、指定校推薦の面接を控えている学生2名の面接練習をしました。2人とも入試の面接は初めてだと言いますから、面接室の入り方から教えました。この辺は常識的に振る舞えば、失礼に当たることはないでしょう。とはいえ、不安の芽は1つでも摘んでおくに限りますから、きっちり指導しておきます。

Pさんは先学期私のクラスにいた学生です。いくら注意してもタメ口で話す癖が直らない学生でしたが、今学期の担任H先生の厳しいご指導のおかげで、みごとに“です・ます”で話せるようになっていました。意地悪をして、絶対に答えを用意していないだろうと思われる質問をしてみても、崩れることはありませんでした。これは、本物になったのかもしれません。

Qさんは課題の小論文の出来があまりパッとしませんでしたが、面接の受け答えはしっかりしていました。本番でもこれくらいやってくれれば、小論文でマイナスがあったとしても、面接で挽回できるでしょう。

指定校推薦の面接は、落とすための面接ではありません。大学側としては、受け入れた後どのように指導していけばいいか、そのヒント、方向性をつかむという面もかなりあります。ですから、大学で勉強したいことや留学の目的・目標、卒業後の計画などを明確に述べる必要があります。これができないと、大学側は目の前の受験生に何をどう指導していけばいいかわからず、そんな学生には来てもらっても困るという結論にもなりかねません。そんな状況に陥らないように、何を勉強したいかはっきり伝えろと指導しておきました。

来週の後半ぐらいに、直前練習をしておけば安心でしょう。

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教師も勉強

11月7日(金)

あさってが11月のEJU本番ですから、日本語プラスの生物も最後の模擬試験でした。解き終わったYさんに模範解答を渡すと自己採点して、「先生、5番の問題がわかりません」と、できなかった問題について質問してきました。PPTなどを用いて解説すると、わかってくれました。

「先生、塾ではこの辺の知識は勉強しませんでした。でも、よくわかりました」とYさん。塾の教育内容と日本の高校生物のシラバスには若干違いがあるようです。塾の先生はYさんと同国人の大学院生ですから、自分が勉強していないことは教えなかったのでしょう。

教師と言えども得手不得手はあります。でも、広く浅くのEJU生物ぐらいなら、不得手でもどうにかできると思います。どうにかするのが、教師だと思います。たとえ学校で勉強してこなくても、自分で勉強して教えるのが、仕事に対する責任ある態度だと思います。

数年前大活躍したPCR法などというのは、私が若いころにはなかった技術です。RNAワクチンも新しい技術です。私はそういうものも勉強して、少なくとも受験生に教えられるくらいにはなりました。私のような年寄りでもそうしているのですから、学問の第一線で活躍している大学院生なら、自分の習ってこなかったことを勉強してEJUの問題に対抗できるくらいになるなど、朝飯前のはずです。

Yさんは来年6月のEJUで好成績を挙げて、国立大学に進むという計画を持っています。十分可能性があります。私も後押ししていくつもりです。

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名前だけの自己紹介

11月6日(木)

Eさんは、今度の土曜日にJ大学を受けます。午後、その面接練習をしました。本当は先々週あたりにする予定だったのですが、Eさんが病気になったり、こちらがBBQの準備で忙しくなったりで、ずっとできずにいました。初めての入試ですから、何回も何回も練習を繰り返すことが必要です。でも、上述のような事情で、本番直前にようやく初練習となってしまいました。

Eさんは、日本語を話すことに関しては、ほとんど問題ありません。発音・イントネーションもきれいだし、複雑な事柄でも筋道立てて話せるし、聞き取りも完璧に近く、コミュニケーションに支障を来すことはありません。しかし、内容を伴わないことがあります。

「簡単に自己紹介をしてください」と聞くと、「A国から参りましたEと申します。……どうぞよろしくお願いいたします」と答えました。これは、レベル1の学生の、入学直後ぐらいの内容です。「急な質問で、何の準備もしていませんでしたから…」と言い訳していましたが、本番でもこんなやり取りだったら、日本語はできないと判定されてしまうでしょう。

面接は、受験生が自分自身を大学側に売り込める数少ないチャンスです。そのチャンスが生かせないようだと、合格への道のりは遠いと言わざるを得ません。他の質問も、Eさんは誠実に答えましたが、パンチが足りません。J大学は毎年受験生が多いですから、このままではその他大勢にされてしまいます。

こんな図が予測できましたから、もっとずっと早くに練習を始めたかったのです。答え方のポイントは教えましたから、あとはEさんに気張ってもらうほかありません。私は祈るのみです。

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凶兆?

11月5日(水)

レベル1のクラスはカタカナディクテーションから始まりました。テニス、サッカーなどという言葉とともに、フォークが出てきました。カタカナの拗音はさんざん練習しましたが、フォとかディとかという、もともと日本語になく、欧米語が大量に流入してから生まれた音に関しては、今まで練習してきませんでした。案の定、学生たちは“フォーク”が何物かはわかったものの、それをどのように表記すればいいかはわかりませんでした。このクラスで一番よくできるPさんですら、“プオク”と書いていました。音的には当たらずとも遠からずだった点はさすがですがね。

正解を板書し、“ファ、フィ、フ、フェ、フォ”でファ行を形成するという話を、レベル1の学生でもわかる日本語でして、ファイト、フィンランドなど、実例を書いてみせました。これからファ行の言葉に嫌というほど出会いますから、できるだけ早いうちに慣れさせておくことが肝心です。

昨日から始まった漢字には、“日”がありました。“日”は曲者で、「九日の日曜日は休日です」という文に出てくる4つの“日”は、“か、にち、び、じつ”と、読み方がすべて違います。中国の学生が、「日本語の漢字は難しいです」とぼやいていました。漢字二日目にして弱音を吐いたりしていては、上級にたどり着くはるか手前で沈没してしまいますよ。

文法は形容詞の活用でした。寒いです、寒くないです、寒かったです、寒くなかったです、というように活用させます。頭では理解できますが、毎学期、口が回らない学生が必ず出てきます。“寒いです…”でつまずいているようだと、“あたたかかったです”なんて、絶対言えません。

日本語は、入り口は取っ付きやすいけど、勉強が進めば進むほど難しくなると言われます。早くもその兆しが見えてきたというところでしょうか。ここで挫折することなく上級まで進級して来てもらいたいものです。

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心は木枯らし

11月4日(火)

それにしてもずいぶん冷え込みましたね。昨日は木枯らし1号でしたから、今朝はコートを着込みました。でも、外に出た瞬間、マフラーもしてくるんだったと思いました。都心の最低気温は8.2度で、今シーズン最低でした。8.2度と言えば、マフラーに手袋でもおかしくない気温です。

日中はよく晴れました。というか、よく晴れたから冷え込んだのです。いずれにしても、バーベキューの日にこのくらい晴れてくれればと思いました。いかにも秋空という感じで、きっと葛西臨海公園の海岸から富士山が拝めたことでしょう。海越しに富士山が見えたら、学生は大騒ぎだったでしょう。そのはしゃぎようを見て見たかった気もします。富士山は、日本人にとっても外国人にとっても、特別な山ですから。

火曜日は日本語プラスの授業を2つします。お昼の時間にEJUの記述、3:15から化学です。今度の日曜日、9日がEJU本番ですから、記述は最終回、化学も来週からは大幅に模様替えをします。来年6月のEJUを目指す授業を始めます。今週まではEJU過去問中心ですが、来週は基礎作りから始めます。

Kさんは最終回組ですが、基礎作りからやり直した方がいいみたいです。先週の記述を返却したら、どうして50点満点の10点なんだと聞いてきました。“?”を付けた文は何が言いたいかさっぱりわからなかったからだと答えると、この文のどこがわからないのかと聞き返されました。主述関係も修飾被修飾の関係も全くわからないと答えると、Kさんはその文の意味を説明し始めました。

Kさんの説明を私がやさしい日本語にすると、「そうです、そういうことです」とKさん。「じゃあ、そういうふうに書けばいいじゃない」「でも、中国ではこう書きます」「ここは日本です。日本の大学に入りたかったら、中国の書き方じゃなくて日本の書き方で書いてください」…。Kさんは自分の書き方を私に認めさせようとしましたが、私は頑として認めませんでした。今までに同じようなやり取りを繰り返してきました。

最終的に、Kさんは「私は作文が下手ですから…」と気落ちしたような表情で去っていきました。Kさんの心の中の気温は、8.2度どころではなかったでしょう。

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