乗れるかな

2月19日(木)

今学期の学校行事は小旅行です。江ノ島方面へ行きます。江ノ島なんて、小学校の遠足とか、そのぐらい以来だと思います。少なくとも、社会人になってからは行っていませんねえ。だから、実際に行ったら、私も学生と大して変わらず物珍し気にあちこち見て回ったりちょっかいを出したりすることになるでしょう。

個人的には江ノ島の地形を詳しく見て回りたいです。朝から夕方まで、島の隅から隅までじっくり観察したいです。しかし、クラスの学生を引率することが第一の任務ですから、その気持ちは抑えて江島神社へお参りに行ったり仲見世通りを歩いたりすることになるのでしょう。

地学的興味を封印するとなると、江ノ電に乗って鎌倉方面に抜けるのが常道でしょう。問題は、江ノ電にスムーズに乗れるかです。週末は言うに及ばず、平日の日中でも観光客でだいぶにぎわっていると言いますから、KCPの学生3クラス分ぐらいが一度に乗ったら車内は立錐の余地もないほどになってしまうかもしれません。

そうなった場合、私は海沿いの134号線を歩いて鎌倉まで行くのも大歓迎ですが、学生たちは断固NO!でしょう。電車を1本か2本待つことになるのでしょうか。となると、江ノ電は14分おきの運転ですから、30分ぐらいあっという間に過ぎてしまいます。ちょっと頭の痛いところです。

学生たちはイマイチピンと来ていないような顔をしていました。江ノ島は、かつてのバス旅行の富士急ハイランドみたいに、だれもがかなりの程度共通したイメージが持てる場所ではありません。こちらが具体的に何物かを思い描かないと、学生たちを引っ張り切れません。研究しなくちゃ。

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性懲りもなく

2月18日(水)

今学期も、後半戦に突入しました。初日は、ぎりぎり遅刻2名、大遅刻1名、欠席2名。最初の頃は発言が少なく雰囲気が重かったのですが、授業が進むにつれて次第に口が滑らかになってきました。最後は質問が多く出て、かろうじて予定通りのところまで進められたというくらい、元気になりました。

いい気持ちで職員室に戻ると、3名の学生が私を待っていました。進学相談や面接練習なら気合も入りますが、この3名は学校周辺のよそ様の駐車場でたばこを吸っていたのを摘発され、説教を待っていたのです。喫煙所以外、殊に他人の敷地は、たとえ灰皿が置かれていても、たばこを吸いに行ってはいけないと指導し続けています。しかし、こういう不届き者が後を絶ちません。

なぜたばこを吸ってはいけない場所でたばこを吸ったのかと聞くと、喫煙所が遠いからだということでした。10時半の休み時間に喫煙所まで行くと、ゆっくりたばこを吸っている暇がありません。往復で10分ぐらいかかりますからね。だから、学生たちは手近なところで間に合わせようとするのです。

なぜたばこを吸うのか――たばこを吸うと元気になるそうです。頭がすっきりすると言いたいのでしょうか。中級以下の学生たちですから、こんな表現が精一杯です。夜更かしやハードなアルバイトで寝不足になり授業中眠くなったのなら、その解消のためにたばこを吸いに不法侵入された駐車場の側こそ、いい迷惑です。

3名にしたら、たぶん見つからないだろと踏んで近場でのんびりたばこを吸っていたら、運悪くKCPの教職員に見つかってしまったといったところでしょう。3名以外にも喫煙者がいて、蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったと捕まえた教職員は言っています。こういう学生たちに、よその敷地でたばこを吸ってはいけないことをわからせるにはどうしたらいいでしょう。

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挑戦は続く

2月17日(火)

先週のこの稿に書いたように、上級の選択授業「漢字検定に挑戦」の中間テストを行いました。予定通りの部首の問題と、漢字熟語の構成の問題を出しました。漢字熟語の構成とは、例えば”新年“は、“新”が“年”を修飾しているとか、“貯金”は“金”が“貯”の目的語になっているとか、“建築”は似たような意味の漢字でできているとか、そういったことを答えてもらう問題です。どちらも選択式にし、漢字が書けなくても点が取れるテストにしました。“仏の金原”の面目躍如です。

とはいえ、勉強してきた学生がいい成績になるように、勉強してこなかった学生は点が取れないように、部首の問題は選択肢を増やしました。これが当たったみたいで、勉強してきたと思しき学生はさっさと記号を書き入れ、30分の試験時間に対し10分ほどで終わってしまいました。勉強してこなかった組は、最初は頭をかきむしっていましたが、そのうちおとなしくなりました。あきらめてしまったのでしょうか。

授業後採点してみると、選択式ですから白紙かそれに近い答案はありませんでした。でも、部首の問題は差が付きましたねえ。満点が数名いた一方で、まぐれ当たりが何問かという学生も同じくらいいました。しかし、漢語の構成はまぐれ当たり組もちゃんと考えて答えた形跡があり、そこそこの成績が取れていました。その結果、不合格はごくわずかで、“この学生が不合格なのは当然だね”という面々でした。

部首が思ったより出来が良かったのは収穫でした。池袋の池はさんずい、飛球市民の地はつちへん…などと記憶を強化していけば、日本人の高校生並みになれると思います。漢字検定に挑戦のみなさん、ぜひ、挑戦してみてください。

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さえない学生じゃなくて

2月16日(月)

午後、明日の上級選択授業の中間テストの問題を作っていると、ロビーに誰か立っていました。何か用事があるんだけど、どうしたらいいか戸惑っている学生のように見えました。しかし、たまたま事務職員がみな席を外していたので、私が出て行きました。私の目には要領の悪そうな学生に映ったのですが、よくよく顔を見ると、卒業生のCさんではありませんか。思わずずっこけてしまいました。

CさんはM大学に進学し、4年間優秀な成績で通し、大学院にも進みました。大学2年生の時から日本語教育能力検定試験を受け、4年生の時に合格しました。外国人留学生が合格するのは、稀有のことです。さらに、昨年、登録日本語教員試験にも合格し、その合格証も見せてくれました。現在は都内の日本語学校で専任講師として日本語を教えるとともに、進学指導もしています。明日が春節で、その前後1日ずつが休みなので、こちらに顔を出してくれたとのことでした。

こぼす愚痴の内容も私たちとあまり変わらず、すっかり日本語学校の日本語教師になっていました。いろいろな公務を次から次と任されて、忙しくてたまらないとも言っていました。若手のホープだからこそ、仕事が回ってくるのです。“忙しい奴=有能な奴”という方程式があり、“大事な仕事は忙しい奴に回せ”とも言われています。有能な奴のところに仕事が集まるというこの状況を、“仕事の万有引力の法則”と私は秘かに呼んでいます。

国へ帰る気はないとCさんは言っていますが、国へ帰って日本語学校を立ち上げられるくらいの力はついたんじゃないかなあ。このぐらいいろいろな仕事をさせてもらっているのなら、早晩それだけの実力が身に付くはずです。どんどん鍛えてもらって、将来へと向かう道幅を広げておけばいいと思います。次に会うときは、日本語学校の校長先生でしょうか、経営者でしょうか…。

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朝の欠席届

2月13日(金)

朝、パソコンを立ち上げると、火曜日からずっと休んでいたXさんからメールが来ていました。昨日病院で検査してもらったところ、インフルエンザだと診断されたそうです。他のクラスにもそういう学生が出ています。1週間で患者数が2倍になったとか報じられていましたが、やっぱり流行っているんですね。

インフルエンザということは、出席停止です。学校へ来てはいけないのですから、休んでも欠席にはなりません。Xさんはすでに進学先が決まっていますから入試が受けられなくて進路決定に影響が出るなどということはありません。しかし、これから受験の学生はまだまだいます。国立大学に照準を合わせている学生にとっては、ここからの10日ほどが正念場です。Xさんの最大の仕事は、学校へ来ないことです。ゆっくり休んで、完全に治してから出て来てください。

Xさんは超級の学生ですから、病院へ行って日本語で症状を説明するくらいはできます。しかし、初級の学生にとっては、これは至難の業です。学校では国の言葉が通じる病院を紹介していますが、それでも学生には敷居が高いようです。国から持って来た薬や日本の薬局で買った市販薬を飲んで乗り切ろうとします。普通の風邪ならそれでもどうにかなるかもしれませんが、インフルエンザとなればそれでは非力です。病院へ行かなければインフルエンザの診断もなされず、だから出席停止にもならず、休めば休むほど出席率が下がります。それは困ると無理して出て来られると、学校中にウィルスをまき散らすことにもなりかねず、学校中が迷惑を被ります。

病院へ行きたくないのならせめて予防策を取ろうよ、と言いたいです。というか、折に触れていっています。でも、どこかからか拾ってきちゃうんですよね、学生たちは。私も、うがいと手洗いを励行し、学生たちの足を引っ張らないようにします。

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逃げ足

2月12日(木)

朝、教室に入ると半分ほどの学生しかいませんでした。チャイムが鳴り出席を取る段になっても、TさんとKさんは現れませんでした。2人とも進学先が決まり、あとは卒業式を待つばかり。もはや、消化試合なのでしょう。殊に今朝はテストがありましたから、敬遠したに違いありません。現に、2人は後半の授業には出席し、授業が終わるや否や脱兎のごとく教室を出て、私がテストを受けてから帰れと止めたにもかかわらず、「明日!」言い残して逃げて行ってしまいました。明日の先生に引き継ぎましたが、明日は「来週!」と言って帰ってしまうに違いありません。この文では、来週火曜日の中間テストもどうなることかわかったもんじゃありません。

これが最上級クラスの学生なら、進学先でやっていけるだけの日本語力があると見て、苦笑いをしてもあげられます。でも、中級クラスの学生となると、合格で受かれている場合じゃないよと言ってやりたくなります。TさんとKさんに関しては、進学後が心配でなりません。

大学は、年が改まる前に留学生入試の合格発表をします。でも、それは、その時点の日本語力で大学の授業に十分ついていけるという意味ではありません。合格発表後も日本語学校で勉強し、順調に日本語力を伸ばしていけば、その大学で実りある学問ができるであろうという推測に基づいた判定に過ぎません。前半部分の仮定を蔑ろにしたら、当然、後半部分の結論も違ってきます。

Tさん、Kさんをはじめ、この理屈が理解できない、あるいはしようとしない学生が多くて困ります。そういう学生の末路を全て追跡したわけではありませんが、一部の大学・専門学校は入学した学生の様子を報告してくれます。「○○さんは、残念ながら帰国しました」という例もよく耳にします。その中には“やっぱりね”と思える学生もいます。そんな学生を送り込んでしまったことに申し訳なさも感じます。

いつの間にか、卒業式まで1か月を切ってしまいました。

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にくづきにほす

2月10日(火)

来週の火曜日は、早くも中間テスト。私が火曜日に担当している上級選択授業「漢検に挑戦」も、中間テストを実施することになっています。漢検の問題をそのまま出したら、みんな討ち死にしかねません。「金原先生のせいでKCPの卒業証書がもらえませんでした」なんて恨まれたくないですから、何か考えなければなりません。学生から恨みを買わず、なおかつその後役に立ちそうなテスト勉強はないかと探しました。

見つけたのが部首です。漢検には部首の問題も出ます。だから先週も練習問題を少ししました。また、進学または就職後に学生たちの周りにいる日本人は、みんな、“うかんむり”とか“さんずい”とか“しんにょう”とか知っているはずです。漢字の説明にだって、「“かくす”は“のぎへん”じゃなくて“こざとへん”だよ」などとやるかもしれません。いまは、スマホに字を示す方が多いでしょうが…。

そういう説明をして、学生に主な部首の表を配り、「にくづきにほす」「さんずいにあお」みたいな説明から漢字を書かせました。慣れていないからでしょうか、みんな苦労していました。私が答えをホワイトボードに書くと、“なんだ、そんな字だったのか”といった顔も見受けられました。選択肢で部首を答えさせるくらいが安全かな。

その後、誤字訂正の問題をしました。“活清化”を訂正するところで正しい字を口で説明させました。最初に出てきたのが「せいかくのせい」。“正”と書いたら、「だんせいのせい」ときました。“声”と書いたらさすがにボケ過ぎですから、“性”と書きました。「りっしんべんにうまれる」ぐらい言ってほしかったなあ。せっかく部首を勉強したんだから。

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寒い教室

2月9日(月)

それにしても、寒かったですねえ。昨日は雪が降って日中もずっと氷点下でした。今朝の最低気温はマイナス3.2度で、東京の最低気温がマイナス3度以下になるのは1984年以来42年ぶりとのことです。42年前は、私は大学院生でした。研究室に通って実験をしていたはずですが、何をどうしたかなど、もちろん全く覚えていません。

これだけ寒いなら、地球温暖化なんかどこかへ行ってしまったと思いたくなりますが、残念ながら、この寒波も地球温暖化が元になっているのだそうです。今、寒くても、5月の連休が終わったくらいには半袖の季節になっているのでしょう。

朝、教室に入ると、学生たちは黙々と教科書を広げて漢字復習テストの勉強をしていました。しかし、教室の暖房は入っていませんでした。ダウンジャケットやコートに身を包んで、シャープペンシルを走らせていました。他のクラスは誰かがスイッチを入れるものなんですがね。

お互い牽制し合っているわけでもなく、和気あいあいと教え合ったりもしています。授業中に険悪な空気が漂うこともありません。だけど、なぜか、毎朝寒い中で勉強しているんです。私が何もしなかったら、12時15分までエアコンなしで頑張りかねません。風邪でもひかれたら大変ですから、いつも、私が暖房をつけます。

暖房がなくても、私はヒートテックの極暖で固めていますから平気ですが、学生もダウンジャケットで耐え抜こうというのでしょうか。次にこのクラスに入るのは木曜日です。実験してみましょうか。でも、木曜日は文法のテストがありますから、やめておきましょうか。とすると、来週の月曜日です。

でも、来週の火曜日は中間テスト。やっぱり、まとめの授業はあったかい教室でした方がよさそうです。

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落ち着かない

2月6日(金)

「先生、9時に発表です」と、一刻たりともじっとしていられない様子のGさんが、せわしなくスマホをのぞき込んでいました。9時のチャイムが鳴り、出席を取り始めた私など眼中にないかのごとく、Gさんはスマホをいじります。寒気の叫びか悲嘆の涙か、どちらが襲い掛かってきても対応できるよう心の準備をしつつ各学生の名前を呼び続けました。呼び終わりましたが、教卓の脇のGさんは相変わらずです。直前の面接練習の受け答えからすれば受かってもおかしくないと、自分自身に言い聞かせている私がいました。

連絡事項を伝え、授業を始めましたが、Gさんの様子に変化は見られません。こちらから聞くわけにもいかず、授業を進めるほかありません。他の学生もGさんのことは気になりますが、ツッコミは入れられません。Gさんを横目で見つつ、でもGさんは無視して、配ったプリントを読ませたりその内容について考えさせたりしました。

こういう形式の授業の際に真っ先に意見を述べるのがGさんですが、今は戦力外です。だから授業を進めにくかったです。どちらの結果でもいいから、早く伝えてくれと思いましたが、Gさんはスマホをいじるばかりで、私の方など見向きもしませんでした。

遂に10時になりました。Gさんが動き始めました。ガッツポーズが出ました。「先生、合格しました」と、Gさんにしては小声で短く一言。教室の中から静かに拍手が湧き起こりました。どうやら、何らかの事情で合格発表が1時間遅れたようです。でも、めでたし、めでたし。

Gさんは本命の大学の試験がすぐそこに迫っています。この合格は景気づけにはなっても、気を緩めるわけにはいきません。来週は、また、面接練習かな…。

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当たり前じゃないんですね

2月5日(木)

昨日に引き続き、中級クラスの授業から。

母国と日本との違いについて語ってもらいました。国籍の異なる3~4人のグループで話してもらったのですが、どのグループもたいそう盛り上がっていました。授業中、指名されても蚊の鳴くような声でしか答えないZさんも、ジェスチャーを交えて自分の体験をメンバーに訴えていました。

そのZさんは、日本のバスは降車ボタンを押さないと停留所に止まらないことを挙げていました。国のバスは、どのバス停にも必ず止まるそうです。バスに乗ると、必ず降車ボタンを確認するのだとか。

Nさんはエスカレーターを歩く人に驚きました。国でそんなことをすると、マナーが悪いと言われるそうです。日本でも立ち止まって乗るのが定着しつつありますが、国際的に見るとまだまだなのでしょう。

Tさんは食券を買わないと料理が食べられないことを取り上げました。国ではQRコードですべて片が付くけれども、日本のインフラができた頃はインターネットがなかったからだろうと考察していました。

Jさんは、日本の街角にはゴミ箱がないことを不便に思っていました。でも、道にごみが捨てられていないことを不思議に思っています。外出したらごみを出さないように心がけていますからね。

電車が交通手段の主力だということを挙げた学生が3人いました。新宿駅で迷子になったり、デートも電車で行くことに驚いたり。電車は日本の象徴なのですね。

宅配便の配達員がすぐに不在連絡票を置いて行ってしまうことを挙げたのはYさんです。宅配便が来るタイミングで家にいないといけないのが不便だと。置き配は怖くてできないのかな。

国にはないスタバやマックが街にあふれていると言ったのはAさん。空港で見てびっくりだったようです。そして、日本は店に入ったとたん「いらっしゃいませ」と店員に声をかけられるのにも驚いていました。

Wさんは給湯器の修理にいろいろな手続きが必要で2週間もかかったことを嘆いていました。その間、ネットカフェのシャワールームで体を洗ったとか。

みんな、それなり以上に苦労しているみたいですね。

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